わがまま

トーエン「ちなみにドロウとはどういたご関係で?」
寝ている爺「かかわってはいない。」
爺さん「駆逐せねば!忌むべきものどもだ。」
爺さん「報酬があるのであれば、ちょっとは考えてもいいかな。」
いやな顔をするそのほかの面々。
トーエン「えーーーー。そこで金!」
大きな帽子の爺さん「無限に○○とか無理だし、そういう願いはできない相談だから、多くの願いを叶えるなんて無茶な願いも受けられないから。」
トーエン「金貨百万枚ください。」
大きな帽子の爺さん「それは経済への影響が大きすぎる。そこら中の国から金貨いきなり消滅する。貨幣経済がいきなり崩壊する。出来ぬ相談だな。」
トーエン「じゃー金貨二十万枚ください。」
大きな帽子の爺さん「領地経営してからにしてほしいものだな。」
トーエン「ぎり影響でないかなーぐらいでー。どんなものですかね。」
大きな帽子の爺さん「金貨の鋳造所ではないんだが。金貨一小箱程度ならば、冒険者の報酬ではいいかもしれぬ。物事には程度というものがある。」
チェルシー「ならば、この炎の神槍の偽物を、レプリカから本物程度の品質に変えていただきたい。」
大きな帽子の爺さん「その程度ならば、まだ検討の余地はあるか。」
チェルシー 絶句
大きな帽子の爺さん「金貨がほしいのあれば、何千ぐらいだな。」
トーエン「それでは、世界は変わらん。」
大きな帽子の爺さん「世界が混乱するのは、あかんって。」
レッシュ「10年後のための前払いの報酬みたいなものかな。」
トーエン「早く移動できる手段がほしい。」
大きな帽子の爺さん「魔法使いを仲間にするとか、早く移動できるペガサスとか飼うとか、ささっと仙人になるべきです。」
チェルシー「快く笑顔で仕事を引き受けてくれる魔法使いを紹介してください。」
大きな帽子の爺さん「それは君たちの人徳だ。我らがどうこうできる立場ではない。」
チェルシー「そういう魔法使いがいないんですよね。」
大きな帽子の爺さん「魔法を勉強すればいいんじゃないの?」
チェルシー「それは十年ではむりです。」
トーエン「原形質をなんとかするしかないのかー。」
レッシュ「向こうにいくしかないのか?しかし、どうやって。」
トーエン「次元の扉を開く魔法の指輪 チャージ10回分を三人分で三個ください。」
大きな帽子の爺さん「しょうがないかー。」
レッシュ「オートミールが湧いてくる魔法の鍋が、すんごい美味しい料理が出てくるようにしてほしい。」
爺さん「それは、ちゃんとした食材と凄腕の料理人をお金をかけて準備するしかない。」
トーエン「そうそう。この籠手壊れて、魔法の力が使えなくしまったんです。直してください。」
爺さん「それは無理。作ってやつでないと修理はできぬ。」
大きな帽子の爺さん「とっても邪悪だし...無理だ。」
トーエン「死神の誘いを一回帳消しにしてくれる免罪符とか。」
大きな帽子の爺さん「無理だ。世界は不便でいいのだ。」
トーエン「武具の師匠として稽古をつけてくれー。」
大きな帽子の爺さん「師匠の紹介はしてもいいか。授業料は払えるんだろうな。」
悩んだ末
トーエン「ホイグンの北の島に送ってくれでいいんじゃないか?ここから出たら、あの島にいるってことで。」
大きな帽子の爺さん「ならば、その島のどこに?」
チェルシー「将軍のところに!」
トーエン「原形質が通ってきた扉は、もうしまっているんですかね??」
大きな帽子の爺さん「しまっているんじゃ〜ないかな。」
トーエン 「今いる奴を送り返したら、それで終わりですよね。」
大きな帽子の爺さん「多分ね。」
トーエン 「全ては、君に関わっている。」
チェルシー「除霊!」
レッシュ「後は頼んだ〜。って抱きついて自爆しろと。」
チェルシー「やめてください。」
トーエン 「火が一番ダメだって言っているだろー。それより自分たちでなんとかしてきてくれないかな。」
大きな帽子の爺さん「それは、できない。口は出せても、手は出せない。そういう規定なのだ。話が堂々巡りになる。」
トーエン 「ものは出せます?」
大きな帽子の爺さん「何が望みだ。いやいや望みは聞いたではないか?」
チェルシー「魔法の槍もらっちゃったし〜。」
トーエン 「金貨百万枚欲しい。」
大きな帽子の爺さん「だから〜それはできない。」
チェルシー「それは聞いたことがあるー。」
レッシュ「若年性痴呆症?」
大きな帽子の爺さん「同じことを二度も言わせるな。」
トーエン 「正直なところ、10年単位ですよね。」
大きな帽子の爺さん「そうそう。」
チェルシー「悪の芽をつむ感じでー。」
大きな帽子の爺さん「健闘を祈るぞ。諸君。」
冒険者たちは、席を立ち、宴の席から退席して、一歩踏み出した。

そこはあぜ道の踏み固めた街道ではなく。
全く違う場所となった。

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茶飲み話

レッシュ「何しに来たの?」
チェルシー「怒られに来ただけとか。世界の真相を見せてもらっているとか。」
黒塗り馬車に乗り込みそそくさと走り去っていく。
トーエン「あそこにエルダーカサカサっぽいなにかをはめ込めば解決するとか。」
大きな帽子の爺さん「あの種族は、もういない。残っているものではその役目をまっとうできない。」
トーエン「原形質はなんか理由があって、反逆したんでしょう。」
大きな帽子の爺さん「今のままでは、この世界は腐ってしまう。」
チェルシー「原形質を氷漬けにできませんかね。」
大きな帽子の爺さん「原形質の種を受け付けられた者たちをすべてこの世界の外に移住させるしかない。」
レッシュ「極北の土地にすべてを固めておくことは無理なんですかい。」
大きな帽子の爺さん「彼らは今の居留地では、食料は増産するのはとてもきびしい。入手や買い付けにあっちこっちうろつく。奴らは自覚が皆無な分。潜在的な被害はさらに拡大する。」
チェルシー「彼らを隔離しないといけないと。」
大きな帽子の爺さん「ならば、移住という名目を与えて、出て行ってもらったほうが被害は拡大しない。」
チェルシー「どこに移住するんですか?」
大きな帽子の爺さん「ここではないところだ。」
トーエン「彼らに除霊の魔法を全部かけていけばなんとかなるんじゃないの?」
大きな帽子の爺さん「それは誰がするのか?」
トーエン「彼が。」
大きな帽子の爺さん「彼らは軍人しかいない。呪文を使えるものは皆無だ。」
レッシュ「軍人は扱いやすい。一か所にあつめてしまえば。」
大きな帽子の爺さん「だから、それを誰が行うのか?」
レッシュ「将軍が命令をして。毎日魔法をかけて駆除すれば10年あければ7000人は駆除できる。」
大きな帽子の爺さん「それって、君たちがすべてを解決するということかな。」
レッシュ「え~。解決できる奴があそこには皆無なんですか?」
大きな帽子の爺さん「ことの本質を分かっているものは皆無だ。対策とて打てぬ。」
トーエン「原形質を除霊した場合、原形質が本来いた世界にもどるわけで、ここからは消失するわけですよね。エルダーカサカサが消滅しているので、それでも戻ってくるということですか?全部返せばそれで終わるということですか?」
大きな帽子の爺さん「そうだな。できるのであれば、時間はかかるが。」
レッシュ「見逃しがないか?探すことが大変だな。」
大きな帽子の爺さん「そうそう。それが時間がかかる仕事だね。戦った盆地界隈を虱潰しに調べないといけない。それが非常に骨が折れる作業になるということだ。」
トーエン「それは彼らにやってもらえばいいじゃ~ないですか?」
大きな帽子の爺さん「彼らはそれを見つける術はないぞ。魔法をまったく使えないわけだし。技術者はいけるけど。他はおらん。」
トーエン「そもそも焼き尽くすから悪い。」
大きな帽子の爺さん「あいつらがやってしまった。」
トーエン「先に教えてあげないと。」
チェルシー「氷漬けにしないとーってね。」
大きな帽子の爺さん「奴らは我らの管轄外だ。」
爺さん「外なる世界からの移住者は、我らの常識は通用せぬ。」
トーエン「ほかの世界からやって来てますしね。10年の間に10人除霊ができる僧侶を育成すれば、意外と大丈夫だと思いますよ。」
レッシュ「戦いに参加したその汚染されている兵士って、どの程度なんですかね。」
爺さん「五百人程度であろう。」
トーエン「1年間程度で除霊は終わるんじゃないかな。その間立ち入り禁止にしておけばいいわけで。」
レッシュ「虱つぶしに探さないといけない。」
トーエン「十年後の発芽した時に除霊をかければいいだけのこと。そのころ彼らも一丸となってまとまって戦うだろう。」
爺さん「果たしてそうだろうか?」
トーエン「原形質は十年間眠っているってことでしょう。」
大きな帽子の爺さん「ふむ。そのはずだが。」
レッシュ「結界を作り、一か所に固めてしまってから除霊すれば、効率はいいか。」
大きな帽子の爺さん「なかなか建設的な意見をありがとう。がっばてくれたまえ。定命の者たちよ。」
チェルシー「我らの指示に従うように説得することはできますか?」
爺さん「あれだけ、高圧的に話をしたから、彼らはそそくさと移住するのではないかな。」
大きな帽子の爺さん「わかっていればの話だな。」
トーエン「そうであれば、勝手にどこかの世界で十年後に発芽するだけのことということか。」
爺さん「ここにいても、災いが拡散するだけだからね。」
レッシュ「そうなると残されたものは放置されたままになるということか。」
爺さん「彼らが退去した後の十年後に発芽したとして、食料がなければ、それほど繁殖はしないとは思うが、食料を求めて彷徨うか、原形質同士で共食いをはじめるやもしれぬ。また気候や環境が変われば、状況もかわるやもしれぬ。」
チェルシー「暖かくなってしまうかも。」
爺さん「その時は、君たちがなんとかしてくれるんじゃ~ないかな。」
トーエン「そんな十年も先のことはやってられないのでー。」
チェルシー「我々生きているかもわからないのでー。」
寝ている爺「期待しているぞ~。」
大きな帽子の爺さん「我らの茶飲み話に付き合ってくれてありがとう。何か望みはないか?そうだな。できることがあれば、叶えてあげよう。」

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呼びつけて追い返す

街道を黒塗りの馬車ががらがらと音を立てて疾走してきます。
その馬車から、御者の案内によって一人の詰襟の制服をきた巨漢の男が下りてきます。
制服はパンパンではち切れんばかりに膨らみ、顔もまるまるとしています。
かなりの刈り上げた髪型はかなりの独特な風貌をさらに強調しています。
詰襟制服「お招きに預かり、恐縮です。」
巨漢の自重に膝が耐えられないような感じで、ふうふうゆうてます。
トーエン「多分ですが、原形質との闘いは?」
レッシュ「将軍様?」
今まで寝ていた老人がそのまま、いきなり喋りだす。
爆睡老人「部下の育成がまったくなっていないぞ。世界は後十年で腐り落ちるぞ。このままでは。」
声だけは怒っているが、老人はテーブルに突っ伏したままである。
詰襟制服の男は、いきなり固まっている。
トーエン「ならば、エルダーカサカサを復活させてみてはどうですか?」
大きな帽子の爺さん「それは無理だ。失われたものは復活はできない。」
トーエン「断片があれば、なんとかなるのでは?」
爺さん「それは定命の者だけだ。浅はかな知識だな。不死者には無理な話だ。」
トーエン「エルダーカサカサって不死者なんですか?」
爺さん「不死者の最後の残証だ。」
レッシュ「もう滅びた?」
大きな帽子の爺さん「弁明はあるかな。」
トーエン「この人、将軍様であっているんですか?まったく違う人だったり、なんかしちゃったりして。」
爺さん「フォイグンの民では、真なる最高指導者だったかな。替え玉ではない。」
トーエン「すいません。お酒とか貰っちゃって・・・・。」
詰襟制服「はて、なんのことやら。」
チェルシー「戻っていないのかもしれない。」
トーエン「どうです。原形質との戦いは?」
詰襟制服「それは部下が対応している事案であって余ではない。」
レッシュ「いっしょに部下と前線に赴いたのでは?」
詰襟制服「はて、なんのことやら。」
トーエン「巨大なコロッサスを操って戦っていたのではないのですか?」
詰襟制服「それは、下っ端だ。指揮官は前線には出ぬ。」
チェルシー「え~~~。どこにいたんです。」
レッシュ「戦いに前線に赴いたのは、まったく別人?」
詰襟制服「影武者、替え玉はそれなりにいる。」
爺さん「誰も信用しとらんのは、寂しいのー。」
大きな帽子の爺さん「さっさと移住しろ。そのほうが懸命じゃな。」
困ってしまう詰襟制服の男。
爺さん「もういい帰れ。」
そそくさと出ていく詰襟制服。

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お茶会

三人は、ほてほてと街道を歩いていく。
一路東に向かって
街道の傍らに長いテーブルをおいて、だらだらとお茶会をしている老人たちがいることを見つける。
天気はいい。
大きな帽子をかぶった爺さんが主催者のようだ。
給仕係のメイド「お暇でしたら、寄っていきませんか?お金なんかとりませんから。」と声をかけてくる。
ぼったくりの昼キャバではないようだ。
レッシュ ぶつぶつ呪文を唱える。
大きな帽子をかぶった爺さんは、いい顔をしない。
無礼な奴だなって感じで心象を悪くしたレッシュは、まったく気が付いていない。
トーエン「爺さんが、女性を侍らしていると、どこかの無駄にぼろ儲けした悪徳商人(俗にいうIT社長)みたいなので辞めたほうがいいですよ。」
大きな帽子の爺さん「なんだそりゃ~。」
初対面に無礼なことをしまくる冒険者。
レッシュ「人も、場所もすべて魔法がかかっている。それもかなり強力な魔法だ。」
チェルシー「妖精界にでも迷い込んでしまったのか?」
レッシュ「悪意はないようだ。罠はないようだ。」
お茶はどんどん減っていく。
給仕係は、焼き菓子やらを順番に出してくる。
傍らには給仕係が何人もいて、湯を沸かし、煙突のついている荷馬車(移動式厨房)があり、せわしなく仕事をしているようである。

話こんでいる割には、一人寝てしまってテーブルに崩れ落ちている爺さんが一人いる。
ほかには、老人が二人。
チェルシー「混ぜてもらえますか?楽しそうですね。」
トーエン「あーお誘いいただきありがとうございます。」
レッシュ「幻覚では、ないようだ。」

大きな帽子の爺さん「ようこそ。ようこそ。まーまーすわりたまえ。」
爺さん「時間の外のテーブルにようこそ。」
レッシュ「とても徳の高い人たちのようだ。俗世間から距離をおく人たちとか。」
お茶がふるまわれる。
大きな帽子の爺さん「こっちの世界にくるかね。」
レッシュ「まだ早いんじゃーありませんか。」
大きな帽子の爺さん「じゃー楽しみに待っているから。」
トーエン「行こうとしたら、『早いうちに摘むに限る。』ってそっちから遣ってくるんでしょう。」
大きな帽子の爺さん「君たち誰かと話がしたいんじゃないかな?」
トーエン「鎖に縛られし神を。」
大きな帽子の爺さん「それは無理だって。世界を破壊するつもりか?」
トーエン「それってどんくらいひどいのかがわからんのですよ。」
大きな帽子の爺さん「世界が終ってしまう。」
トーエン「このまま善と悪が戦っているのが延々続いているのと、世界が終わってしまうのでは結果が変わらないのでは?」
大きな帽子の爺さん「すべてが平和になってしまったら、静止した世界になってしまう。エントロピーが0になった世界は、世界自体が死んでいるということを理解すべきじゃな。」
トーエン「このまま殺し合いを続けるんでしょう。」
大きな帽子の爺さん「ある程度の犠牲は必要だ。」
トーエン「きれいさっぱり無くしてしまうのと大差ないでしょう。」
大きな帽子の爺さん「ちょっと今困った事案があってだね。そうそうゲストを呼んでいたのであったな。ふむふむ。」

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別れ

なけなしの小銭を持って集まってくる村民
六日で奇病の患者は全快する。
小銭が山になる。
レッシュ「これでも食べて元気になれー。」と言って買ってあった保存食料を分け与える。
干し魚、塩漬けの肉、塩漬けの野菜
レッシュの評判は大きく上がった。

あばら家のようなマイドゥの祠がある。
レッシュ「建て替えだー。」
賛同する人は皆無だ。
レッシュの評判はあがったつもりになっていた。
全快して、お腹がふくれた村民は建て替え計画に賛同するという話になった。
トーエン「別にそんなことしなくてもいいよー。」
石を積み上げ、大きな石板を突き刺す。
「生活に困窮スル難民・病人を幾度となく救ったことに敬意を表す。」
ということになる。
マイドゥの祠建て替えがとん挫した結果である。
漁民「最近、へんな魚がかなり獲れるんだ。」
海洋汚染も進んでいるようだ。
トーエン「それは食べちゃあかんやつだ。」
漁民「爺さんたべたんだけどー。」
トーエン「それはいいか。じゃー畑でも作っていくかー。」

トーエンとレッシュは荒地を鍬で耕すことにする。
農民に鍬や鋤を渡す

合間には
トーエン「あの鍛冶屋のエルフが戻ってきたら、トーエンのところに行くように伝えてください。決して村には入れないように。旧トロンヘム王国に行きなさいと。」
と村長に伝言しておく。

トーエン「(ゲルスから飛ばされた民に対して)復興は始まったばかりだが、人はいるけども寒村という程度だ。元からいた民はもういない。」
難民「大崩壊で生きている人はもういないと思う。それが事実。」
トーエン「新天地で頑張れ!」
レッシュ「まともに敵対しているにはドロウだし。これは続けないと。」
トーエン「神託にお伺いをたてるか?それとも一旦解散する?」
チェルシー「定住はしないな。技を極めるかな。弓の師匠を探すとか。あと旅日記を書いてもいいかな。売れるかうれないかなはあれだけど。」
トーエン「エリーとおばちゃんはどうする?」
おばちゃん「マイドゥ神殿の傍らで参拝者相手に食堂かな。そつなく稼げそうだし。」
チェルシー「しっかりしているしー。食い逃げは神殿が治安維持とかしてくれそうだし。」
レッシュ「税金はしっかり取り立ててそうだし。」
おばちゃん「とうとう解散かい?」
トーエン「とりあえず、やることがなくなってしまったので。」
絶句する賄いのおばちゃん。
トーエン「エリーは、どうする?おばちゃんところで働く?」
エリー「それは、おばちゃんが雇ってくれるんならね。」
チェルシー「手当もまったく使う暇がないし。お金はあるかー。マイドゥ神殿の食堂のおばちゃん!」
トーエン「じゃー。レッシュ、おばちゃん、エリーは神殿に定住するんなら、何かあった時のためにこの絨毯をあげよう。使い込んでぼろぼろだけど。」
おばちゃん「ほんとに解散してしまのかい?」
トーエン「エレメンタルストーンを探してね。」
レッシュ「絨毯は大事にしまうよ。」
トーエン「買出しに使えばいいじゃないか。」
レッシュ「とりあえず三人で行く?」
会話は二転三転するも、まったく結論はでない。
トーエン「だめだったらもどってくるので。」
エリーとまかないのおばちゃんに、手切れ金といか開業資金をわたして、マイドゥ神殿の門前で別れることにする。

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奇蹟

農民「工場がなくなっている。なんでじゃー。」
レッシュ「いま、局地的な地震がありました。」
農民「前金で金を払ったのに。」
泣き崩れる農民
チェルシー「神の怒りに触れたのです。」
農民「詐欺だったの~。」
トーエン「詐欺ではないけれども~。鍬ぐらいは自分たちで作らないと。こんなちちゃい村なんだし鍛冶屋の一人ぐらいはいるでしょう。」
農民「一人いたんだけどー。」
トーエン「あれは厳密にいうと鍛冶屋ではない。」
農民「消えちゃった。」
大騒ぎになる近隣の農夫の方々
トーエン「あれは鍛冶屋ではない。」
農民「屁理屈ごねてるだけでさー。」
トーエン「あれは鍛冶屋ではない。機械を操る技師だった。」
農民「わけわからんことをぶつぶつごねているにーさんは放置だ。鍛冶屋がいなくなった。その事実はある。」
トーエン「なにかを作っていたようだが、コストとリスクが大きすぎるのでいらない。」
レッシュ「それは何を作っていたんでしょうね。」
トーエン「わからん。」
農民「前払いした金もなくなった。」
トーエン「鍬をどんだけ頼んだの?」
農民「鍬とか鋤を20本。」
トーエン「わかった。ちょっと買ってくるよ。」
チェルシー「鍛冶屋をスカウトすべきなんじゃー。維持メンテぐらいはできるはずだし。」

仕方なくマイドゥ神殿の町で鍬と鋤を20本購入して、舞い戻るトーエン達
24日の時間が流れる。                              
マイドゥ神殿での若手鍛冶屋見習の確保は失敗した
鍛冶屋の仕事はあるという宣伝をした。

トーエン「村長 なにか困りごとはないですかね。」
村長「草が生えなくなった土地がある。」
トーエン「その表土をかき集めて~。変な油とかも集めて。」
じつは二週間前にトーエンが放置した残土の山だったわけです。
放置したことも全部忘れているトーエン。

強烈な揺れがあたり一帯を襲う。大地鳴動
地割れが大きく走る。大きな土砂崩れが発生
汚染された土砂が地割れに吸い込まれていく。

トーエン「変な鍛冶屋に騙されないように。変な病気になったりゲホゲホ言って血を吐いたり倒れたりと大変なことになるとこだったんぞ。」
村長「すごーい。もういるんです。30人ばかり原因不明の奇病に侵されて寝込んでいる人間がいるんです。」
トーエン「ここに徳の高い司祭がいます。はーい お布施を持ってなれべー。」
チェルシー「ありがたい司祭の奇蹟をその目でみるがよい。」

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粛清

トーエン「こらこら!前も言ったでしょう。環境破壊はよろしくないって!」
エルフ「いやいや~皆が鍬をつくってくれとかー。」
トーエン「以前、油が流れていかないように作ったでしょう。ほかにも教えたでしょう。」
エルフ「それは、あっちの島の時でーーー。」
トーエン「それをここでも作れー。」
エルフ「向こうの島からも移住してきたヤツとか、狩猟にきた奴に迫害されて放り出されたのだ。出て行けって~。」
レッシュ「垂れ流しー。」
エルフ「そんなことをしたら、価格があがる。それは客が喜ばない。」
トーエン「なんで鍬を作るのに油を垂れ流すんだよ。そっちがおかしい。」
エルフ「皆の注文がくるから捌かないと。あれもこれも要求がいろいろ。高くするなとか。」
*日本の中小企業の問題点の縮図なわけです。
トーエン「なんでー炭を使わないんだよ。すぐ油を使うしー。」
エルフ「それって買わないといけないじゃん。」
トーエン「作ってやるから炭持って来いと言えばいい。」
エルフ「物々交換...。」
トーエン「手間賃、材料費は別ってことですよ。」
エルフ「流浪の身ゆえ そんなことは考えたことはなかったな。原価が見えてしまうのは、あまりよろしくない。」
レッシュ「どこから油を仕入れていたんですか!」
エルフ「教えてあげないよ!ジャン」
チェルシー「絶対背取している。」
トーエン「仕入れているならば、廃液そこに送り返せばいい。」
エルフ「それはもっとコストが上昇する。集めないといけなし、回収しないといけない。」
レッシュ「なんで廃液がでるんですか?」
エルフ「そんなことを聞かれても、わかんないよー。」
なんとか適当に言い逃れをしようとする。
トーエン「機械に油を挿すのはわかるが、それでは鍬を作るには多すぎる。鋳造と鍛造をやって作っているならばなおのこと油はそんなにかからない事実です。」
エルフ「機械は全部油をささないといけない。洗浄も油でやってるよ。」
レッシュ「重金属の廃液がでるから、自然に悪いよね。」
エルフ「普通だよね。この町は栄えているんだし。ちょっと阻喪をしたぐらいでなんら影響はないって。」
トーエン「今までなにか作ってもらいましたっけ。」
エルフ「レッシュ殿のハンマーとか。ミスリルプレートアーマーとか。」
レッシュ「俺ばかり。」
トーエン「鍬でこの油では割が合わない。本当はいったい何を作っているのかね。」
チェルシー「何か趣味のものを作っているな。」
トーエン「神々が作り上げた巨大コロッサスの偽物をじつは作っているとか。」
エルフ「そんな巨大なもの、こんな小さな工場では無理ー。」
レッシュ「小さな部品で作って、勝手に組みあがるようにすれば組立工場はいらないよね。」
トーエン「なんでー鍬を作って、重金属の廃液がでる。そこがおかしい。ほんとはいったい何をつくっているのだ。」
エルフ「なんで教えないといけないのだ。」
トーエン「ここらで手を組まないか?」
エルフ「どんどん邪悪になっているのに、手を組む理由が見当たらない。」
トーエン「ほぼほぼ邪悪じゃん。世界を重金属の廃液で満たそうとしているんだから。行く先々で植物は枯れ、収穫が皆無になっている地域が拡大しているというのに。」
レッシュ「さらには汚染された河川周辺には、愚か者が急増。痛い痛いと叫ぶ奇病の患者が急増。おかしいでしょう。」
エルフ「教える義理はない。」
トーエン「じゃー奈落へごー!」
強烈な揺れがあたり一帯を襲う。大地鳴動
地割れが大きく走る。
トーエン「帰ってくれば、また会おう!」
煙突が林立する工場区画がゆっくりと地割れの中に吸い込まれていきます。
建物とその基礎部分がまとめて消失。
働いていた人はどうなったのか、まったく不明。
トーエン スコップで汚染された残土を必死にかき集める
トーエン「残りの作業は明日だな。こういう有害物質は処分しないとね。魚の為にはそれがいい。世界の為にこれが一番の策。世界を毒で世界満たすわけにはいかなかったのだ。何を作っているのかわからなかったが、完成しなくてよかった。」

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ハンマー

周囲には、下っ端の司祭がぞろぞろ集まってくる。
火がドーンと吹き上がる。
司祭が皆で詠唱をはじめる。
トーエンにはまったく意味が理解できない。
司祭の口調が、がらりとかわる。
司祭「あれは、古のカサカサの最後の一欠けらだったのだ。最後の封緘がこわれてしまった。」
トーエン「人食い巨大アメーバーがそれで出てきたと。元に戻すことはできますか?」
司祭「すべてを全部作り直すことだ。幾重にもあった壁や扉をすべて全部作り直す。それしかない。」
レッシュ「それは人間ができるものなんですか?」
司祭「知識があれば、できるかもしれない。」
チーン
集まった司祭は時間がきて、退出していく。
トーエン「いにしえのカサカサが、すべてをかけて封印してたものを再現なんて無理なんじゃねー。何千年かけてやってきたことを数日で再現なんて無理だー。」

食料を買いこみ、物資の補給をする冒険者。
チェルシー「種芋もいるんじゃーねー。」
トーエン「繁茂の呪文とかーないんかー。お土産もいるでしょう。ひよこ とか。」
20トン分の食料を購入する。

15日後 3月7日
トーエン村に到着する
人口2千人ぐらいに膨らんでいる。
移住者ばかりの村になっている。
400戸ぐらいにまで急増している。
チェルシー「暫く見ない間に大きくなってー。」
村の入り口というか、村の一番外側の区画にひと際おおきな煙突
真っ黒な工場があり、煙をもくもくと吐出し
けたたましく音をたてています。
いきなり興奮したトーエンが工場に怒鳴り込む。
トーエン「これダークエルフ。」
ゴンゴン ゴンゴンと蒸気ハンマーがうなりをあげている。

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寄進

2月22日
マイドゥ神殿を訪れる冒険者一行。

レッシュ「寄進しなきゃー。」
司祭「どーんと神殿に寄付しないとー。」
レッシュ「じゃー金貨70枚」
事務員 しぶい顔をしている。
司祭「えらい倹約してますねー。」
レッシュ「稼ぎがいまいちなものでー。」
司祭「浪費は美徳ではありませんから。」
チェルシー「パトロンいませんからー。」
司祭「早くがっぽり儲けている資産家を見つけることですな。信心が足りません。早く信者を増やすことですな。」
反省しきりのレッシュ。
チェルシー「他の宗教の足を引っ張ることはしているのですが、布教に結び付いていないですからね。」
トーエン「司祭さん 今エレメンタルジェムを探しています。どこにありますか?」
司祭「相談かな。」
トーエン「そうです。」
司祭 皿をだしてくる。
トーエン「お金持ってない。」
仲間の間で金策でごにゅごにょ会話をしている。
トーエン「じゃー金貨70枚。」
司祭「では、相談にのろう。金貨70枚分。」
トーエン「鎖に縛られし神との対話を。」
司祭「それは出来ぬ相談じゃー。触れてはならぬ事案ゆえ、寄進は返す。二度とは口にしてはならぬ。悪に染まるぞ。」
顔は豹変する。
トーエン「奈落の拡大を防ぎたいだけなんですよ。」
司祭 まったく何のことやらさっぱりわからないという顔をしている。
司祭「無理なことを聞かれて、答えられないものは寄進は受け取れぬ。なんと良心的ー。あまりに極端な話をしていると異教徒の烙印を押されて迫害されるので言動には注意するように。そうそう呟きではなくて贖罪するならば、向こうで免罪符を買ってください。」
トーエン「金貨1枚程度ではまったく足りないじゃーないかな。」
司祭「許す許さないは、神が判断するべきことであって、貴殿ではない。なんなら、売り場まで案内しようか?」
トーエン「とりあえず、現世利益のほうが忙しいので。」
司祭「ではどうするのかな?」
トーエン「なにか壊してはいけないものを壊してしまったようなんですが、それがなんだかわからないんです。なんですかねぇ?」
司祭(@_@)
トーエン「北方の大海の向こう側の陸地にカサカサの神殿がありまして、その中の黒い神殿の奥にあった光輝くものをつい勢いでぶっ壊してしまったのですよ。そしたら、その傍らから、人食い巨大アメーバーが噴出しましてあっちこっちに拡大してなんでもかんでも飲み込んで大きくなちゃったようなんです。あれ壊してまずかったですかね。」
司祭「神託をうけないと、言っていることがさっぱりわからない。」
レッシュ「では寄進しましょう。」

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忠告

銀龍「なんでしないといけないのだ。」
トーエン「だって、盾の中に入れないじゃん。」
銀龍「お前らと話すつもりはないからさっさと向こうにいけ!面倒くさいなー。」
チェルシー「若いから、とんがってるなー。」
銀龍「巻き込まれたくない。」
トーエン「真鍮龍は、散々こき使っておいて、銀龍は使われるのは嫌だーって、それって歳の差なんですね。きっとこき使われるほうなんですね。」
チェルシー「まだまだ経験がたりませんね。」
銀龍「なんで手伝わないといけないのだ。手伝う理由が存在しない。」
レッシュ「正義の為に。」
トーエン「格好いいから。」
銀龍「わけがわからない。」
トーエン「ここに神聖な炎の槍を持った、女レンジャーがいるわけですよ。」
銀龍「偽物ばっかりじゃん。本物が一つもないしー。」
チェルシー「私が偉大になれば、いつかは本物として認められる日が来るやもしれません。」
トーエン「ギリ上等な偽物だからーいいんじゃない?そうそうエレメンタルジェムがこの近所にないですかね。」
銀龍「そんなものこの界隈にはない。(きっぱり)」
トーエン「どこのありますかね。」
銀龍「そんなのは、知らないよー。他にあたってくれー。邪悪な連中に聞いてくれ。」
トーエン「エレメンタルジェムって善悪で取り合うものじゃないんですかー。」
銀龍「そんなものを欲する理由がないが。」
トーエン「いやいや。これが意外といけるんですよ。多分善人じゃーないからだと思うのですが。」
銀龍「普通、使えないし邪悪なものだから普通の民は必要ではないものだ。」
トーエン「一個だけでは使えないんですか?」
銀龍「一個だけでは、強烈でも使えない。使うものではない。」
トーエン「精霊召喚とか。」
銀龍「精霊世界への道を開くとか、邪悪な精霊を召喚するカギとなるとか。そんなものはいらない。」
レッシュ「銀龍さんは、普段は何をされているのですか?」
銀龍「そんなことをいわれてもねー。食って寝てるぐらいかな。」
チェルシー「個人的なことなのでお答えできませんってことですかー。」
トーエン「ひとつ貴方に忠告しておきます。貴方がここで寝ていることを私は知っている。早めに場所を変えたほうがいいだろう。」
銀龍「面倒くせなーなー。忠告はありがとう。早くどこかに行け!」
トーエン「では、先を急ごう。ここにいてもまったく収穫はなさそうだ。」
仲間を盾の中に放り込み、さっさと幽体に霞となって先を急ぐことにする。
銀龍 きらきらするものを大量に吐いている。
あちらこちらが氷で覆われていく。
洞窟の中は飛翔する氷の欠片が渦巻いている。

山の中を突き進むトーエンであった。

幕間
「人間ってあんなに面倒だったかな。」
「以上にめんどうな屁理屈ごねまくりだな。」
「門番ご苦労様です。」
「報酬の牛二頭です。おまけに豚二頭です。」
「ブーブー」
「モーモー」
「ぶひぶひ」

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